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最初にあるものが違えば、存在が違う。言葉も違う。[D-Stadium編集部・企業インタビュー:株式会社ユーグレナ]

私とユーグレナとの出会いは「自由が丘スイーツフェスタ」。現地でメディアの仕事をしていた私の前にユーグレナのブースが現れたのだ。ユーグレナと自由が丘。その強烈な組み合わせ(当時はそう思った)はずっと記憶に残っていた。あれから約10年。ユーグレナの奥田佑佳さん(サステナプルマーケティング部)、的場優季さん(海外事業開発部)に、話を伺った。ずっと私の中にある「ユーグレナは素敵なアホ」の仮説を探るべく。

好きだからつきあうか、つきあってから好きになるか。

有田:以前に求人系の広告コピーで「好きだからつきあうか、つきあってから好きになるか。これってけっこうな問題だ」というのを作ったんです。一見恋愛っぽいけど、実は仕事を選ぶこともこんな感じじゃないかなと。おふたりはどうでしたか。ユーグレナという企業で働くという選択は。

奥田:私は、好きだからが8割くらい。経営理念がいいなと思って。でも入社してから会社のことをさらに知ったり、素材の魅力を知ったりして、より好きになった部分もありました。

有田:経営理念の、どのあたりがグッときましたか。

奥田:「人と地球を健康にする」。入社当時は経営理念がこれだったんですけど、「健康」は私にとってすごく大切にしている価値観だったので、 そこがフィットした感じです。



有田:入社する前に見えなかった部分で、より惹きつけられたところも伺いたいです。

奥田:そうですね。研究のメンバーがユーグレナという素材にのめりこんでいく姿だったり、「毎日の健康管理に愛用しています」とか「おかげさまで体調がよくなりました」みたいなお客様からのお手紙だったり。

有田:なぜ、奥田さんにとって「健康」は重要だったんでしよう。

奥田:もともとは結婚式場で働いていたんです。結婚式というセレモニーで人を幸せにしたいと。でも…けっこうハードな仕事で、実際には自分が不健康な生活をすることになった。人を幸せにするのに、自分は不健康。なにか違うなって。

有田:ありがとうございます。では、的場さんもお願いします。

的場:めちゃくちゃタイプです、と言ってつきあい始めたと思います(笑)

有田:どこがタイプだったんでしょう。

的場:私は高校生の時にグラミン銀行を英語の教科書で知って、国連で働くことに興味を持ったんです。そして、貧困問題や環境問題にアプローチする開発環境学を学べるのは、自分調べでイギリスのとある大学にしかなかったのでその大学に行きました。ただ「実際にビジネスの現場で見てみいたい」という思いはあって。そんな時に、ユーグレナと出会いました。最終面接で「どんびしゃです」って言ったことも覚えています。

個の存在が際立つこと、言葉のチカラ。

有田:ユーグレナのHPを見て感じたことが2つあるんです。ひとつは「個」が立っていること。「ユーグレナプロジェクト」と称して様々な「事業」が紹介されていますが、企業という大きな主語じゃなくて、担当者が顔写真付きで出てくるんですね。組織と個の関係というか、これが独特。もうひとつは、社長の言葉です。「クレイジーになるということ」「50点からでいい」とか 。「こだわりと継続」「売らないマーケティング」もですね。リアルで愛があって、でも生ぬるくなく外に開いている。めちゃくちゃかっこいいなって思います。
こんな私の印象、おふたりはどう思いますか?

的場:ご自身でもいろんな言葉をつくられている有田さんの心にもユーグレナの言葉が響いたり刺さったりするのは、とても嬉しいです。経営陣が普段からすごく自分の言葉で考えているのは間違いないんだろうなと。

有田:的場さんにも刺さってます? 経営陣が発する言葉。

的場:そうですね、大事にしています。

有田:今思い出す、一番効いた言葉というと。

的場:「変化しているときはストレスだ」っていうのがあって。ストレスは成長している証だっていうことですね。自分が進化しているから、慣れないことをしているから、ストレスを感じているだけだって客観的になれたりします。

有田:いいですね。私も冒頭で話したコピーの続編で「躊躇や不安もすべてプロセスだ」みたいなことを書きました。そんな感じですよね 

的場:一歩メタ認知したら、あなたはここにいますよ、っていうのがわかるっていうか。渦中にいると、つらいときもありますが。

有田:言葉の話、奥田さんはどうでしよう。

奥田:「完璧でなくていい、失敗をたくさんしてほしい」っていうのは、社長の出雲もよく言っていることで。むしろチャレンジしないほうが指摘される。失敗に対して寛容で、チャレンジをさせてくれるのはありがたい環境だと思っています。もうひとつは、「売らないマーケティング」。もともと出雲がバングラデシュの子供たちを見て栄養失調をなくしたいというところから始まっているので、商品を売る、会社の売り上げを作ることよりも「健康にする」が最終目的。「そもそも私たちが売るべきものはユーグレナなのか?」が議論になるくらいです。「売らないマーケティング」は、私にとって大きな言葉です。

バングラデシュのGENKIプログラム。
ユーグレナ(ミドリムシ)入りのクッキーを子どもたちに渡している。

先付けのサステナブルか、後付けのサステナブルか

有田:ほんと独特の企業カルチャーですよね。一般的に大きな企業って、後付けでサステナブルな話がくるじゃないですか。まず事業があって「あっ今はサステナブルなことが重要なんだ」ってことで、後付けする。ユーグレナは真逆。ここが決定的に違うところかなと思っていて。

奥田:本当にそう思います。サステナブルな世界を目指し始まった会社、くらいの。でも、 そこのところを世の中に伝えきれていないところもあって。サステナブルなイメージの会社ランキングではなかなか名前が出てこないのでまだまだ努力が必要ですね。

有田:世間がユーグレナについてこれていない?

奥田:ちょっと早すぎたんですかね(笑) ただ、もっと伝える努力が私たちに必要なのは間違いないです。  

有田:でも一方で、サステナブルを一番の重要価値とか、指標にすると、ある意味すごく「ソーシャル」な存在になっちゃう。「いいことしていますよ」的な。でもユーグレナにはその感じがないんですよね。「いいこと」をしているんだけど、はたから見たときにその感じがまったくない。

奥田:それはいい意味で、ってことですよね?

有田:もちろん、もちろん。本当にカッコいいと思っています。

奥田:これはもう想像になっちゃいますけど「いいことをしていることをわかってもらいたい」という思いはないのかもしれません。困っている人を助けたい、幸せな人が増えてほしい、というゴールにただひた向きに行動しているという印象を、私個人としては受けています 。

有田:健康にしたい、幸せにしたいっていうようなソーシャルな部分とビジネスが、なんでこんなに融合しているのかなっていうことに、私はすごく興味があります。バランスをとりましょうとか、ぎりぎりのところを狙いましょうとかでもなく、そんな次元を凌駕してしまっている。

的場:そもそもは栄養問題を解決したいということで始まっているんですけど、ボランティアとか、NPOを立ち上げるとか1ミリも考えなかったと思うんですよ。ビジネスで課題解決したい、で始まっていて。ナチュラルにビジネスから始まっているから、結果的に両立しているんじゃないかなと思います。バングラデシュの事業もバイオ燃料もそうで、キャッシュは自分たちで稼ぎながら栄養問題や環境問題を解決していくっていうのがごく当たり前になっている。

有田:じゃあ、さらにおふたりの想像でいいんですけど。なぜそもそも税金や寄付を使うという選択肢がなく、 ビジネスと社会課題をナチュラルに一緒に考えたんだと思います?

的場:ひとつは出雲がインターンで国連を見ていたから。ベストはこういう仕組みじゃないなって感じる部分があったのだと思います。もうひとつは、単純に出雲が根から起業家なんです。少し話がずれますが、「ビジネスって必ず誰かの社会課題を解決しているんだ」ってよく言いますけど、私はあんまりそう思わない。儲かるからやってるビジネスもたくさんあると思うんですよ。「○○がしたいという人の欲求を満たしているから、その人の課題を解決している」という理屈は私はあんまり好きじゃなくて。社会課題を解決するビジネスと、そうじゃないビジネスはあると思っています。どっちがいいってわけじゃないですが、社会が志向するのは社会課題を解決するビジネス。出雲は起業しましたが、目的が「栄養問題」という社会課題を解決することだったから、ビジネスと社会課題が一緒になっているのは必然だと思います。

ユーグレナバイオ燃料で走る船舶。

理念の大きさ、サステナビリティ・ファースト。

有田:そんな「ありき」は社員のみなさんとどう関係しているんでしよう。

的場:ユーグレナは「人と地球を健康にする」という経営理念を含む各種用語をなくし、2020年にユーグレナ・フィロソフィーとして「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」に統一しました。「何をするべきか」ではなくて、「どうあるべきか」が一致していれば、何をしていてもみんな行く方向は同じだっていう考えです。「じゃあ、みんなが目指すサステナビリティってなんだろう」っていうワークショップをやったんですよ。家族の幸せでもいいし自己実現でもいいし、みんなの目指すところってなんだろうっていうワークショップ。「何をするべきか」は問われていないので、自分のありたい姿とユーグレナのありたい姿が一致してることを仲間200人が確認できたんです。大なり小なりズレはあって200人全員同じじゃないと思いますけど、「サステナビリティ」に腹落ちするタイミングはありました。

有田:そのワークショップで話した、自分にとってのサステナビリティを、おふたりに伺いたいなと思うんですけど。ちなみに私も仕事で「ユニバーサル社会」っていうものを考える機会があって。で、そのときに自分にとってのユニバーサル社会も話をしました。それがね、昔の仕事仲間で、仕事がハードすぎて脳梗塞になって今車椅子生活をしてる後輩がいてて。そいつと、半年に1回、自分が車椅子を押しながらキャバクラに行けることって言ったんですよ。車椅子でキャバクラに行けるが俺にとってのユニバーサル社会。そういう「個」があって、それをお互いに共有して、そこが一番大事かなって思うんですよね。

的場:そうです、そうです。まさに。 

有田:おふたりは何を書いたんですか。 

的場:私は「自分らしさ」「自分に素直にあれること」。

有田:今はそうやって、自分らしく素直に生きてますか。

的場:どうかしら(笑)  

有田:どうかしらって、答えを出し切らないのも的場さんらしい。

的場:丸く収めていただいて、ありがとうございます(笑)  

奥田:私も、自分もまわりのみんなも個性を大事にしている状態がサステナビリティかなと。無理にお願いするとか、されるとかなく、みんなが個性を活かしてよりよい状態をつくっていける、ような。

有田:奥田さんにとっての自分らしさっていうのは?

奥田:そ…うですね…。やりたいことをやって、やりたくないことはやらない(笑)

的場:素直(笑)。

有田:最近はやりたくないことはやらない人生を送れてます?

奥田:なるべく断るというか。目的を理解するようにしています。目的がわかれば、別の形を提案したり…はするかもしれないですね。

有田:一見やりたくないことでも、話をして目的とか、向こうにあるものが「ああそうかそうか」と思えたら、先に進めるかもしれないですもんね。

的場:つき合って好きになるやつ、ですね、まさに 

有田:うん、そうそう(笑)。的場さんの自分らしさ、もうちょっと噛み砕いて、具体的に。 

的場:私の自分らしさは、挑戦すること、経験したいと思ったことは経験するということ。あとは自分の言葉で語るっていうことですね。

どんな存在か、どんな存在でありたいか。

有田:最後に伺います。今の世界、社会、日本の中で、ユーグレナってどんな存在だと思いますか。あるいは、どんな存在になれればと思いますか

的場:会社を知った時に、問いや疑問が生じる存在。シンプルにいうとサステナビリティのリーダーでありたいと思っています。サステナビリティやSDGs、とか社会課題解決はもう溢れていて、そのなかでユーグレナを知ったときに「あっこういうことを本当にやってる会社があるんだ」「サステナビリティって環境に対してだけじゃなくてこういうことなんだ」っていうのを感じてもらえたら。アホって言葉もありましたけども、変な人を見つけた時にこういう表現の仕方もあるんだ、みたいな。異質なリーダー企業であれたらいいなと思います、希望も含め。

有田:素敵です。やっばり、クレイジーとか、異質じゃないと、変わらないですもんね、周りは。クレイジー、大好きですよ。

奥田:私は、ユーグレナ全体を知ってくれている人ってごくわずかだと思っていて。健康食品を売っている会社、化粧品を売っている会社、バングラデシュの活動だけを知っている方、バイオ燃料のことだけを知っている方、いろんな印象があって。そこがすべて繋がって健康食品もやってバングラデシュのこともやってビジネスとサステナプルな取組みをうまく両立させる…そんな存在と認識してもらえたらと思います。

有田:でもそれは逆にいうと、これから先の楽しみですよね。接点がいっぱいあるということですから。健康食品、化粧品、バイオ燃料…こんなに多くの接点があるから、それたけ多くの人と関係をもつことができるっていう、すごいポテンシャルなんだと思います。こんなこともやってるんや、って気づいてもらった瞬間のチカラってすごいと思います。

奥田:実際に健康食品だけを買ってくれていたお客さんが、バングラデシュのGENKIプログラムをお知りになって「そんないいことまでしてくれてたの!ありがとう!」みたいな感想を言ってくださることもあります。楽しみですね、つながっていくことは。

中学生の取材を受け

的場:「的場:「自分」と「中学生」の距離。けっこう離れていることに気づいたっていうのが率直な感想で、逆に言えば歳が離れるからこそどんどん役に立てることも広くなっていく。歳が離れたから忘れちゃうんじゃなく、役に立てる部分は広いままの大人でいたいなって思いました。

奥田:中学生からの質問はすごく面白かったです。「バングラデシュの子供たちは毎日同じクッキーで飽きないんですか?」という質問があって、私はそんな視点がまったくなく考えたこともなかったんです。純粋な質問というか。私自身も新しい発見がありました。


■D-Stadium「編集の教室」に参加の中学生が書いた企業インタビュー記事は、こちらから。



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