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  3. 「外貨獲得」と「個」[D-Stadium編集部・企業インタビュー:株式会社NTTデータ]

有田:今日はよろしくお願いします。どうでしたか、先日の(中学生からの)インタビューは?

荒:すごく楽しかったです。なにより質問内容が深い。イエス・ノーで答えられるものではなく、私自身が考えるきっかけになりました。

有田:そう言っていただけると嬉しいです。中学生も喜ぶと思います。荒さんって、どんな中学生だったんですか。

荒:比較的いろんなことに興味は持っていました。ただ世界が「家族」と「学校」の2つしかなかった。好奇心は旺盛だったけど、その興味の「幅」っていうのは、D-Stadiumの中学生とは全然違ったかなと思います。

有田:私も大阪の郊外の本当に小さな町で育って、考えてることは女の子のことばかりだったし。挙げ句の果てに付き合っている子に対して「俺はこの子の何が好きなんやろう」と日々考え続けてるという、とても失礼なやつで。でもそういう答えの出ない、何か引っ掛かりのあることに興味を持つっていうことはずっとありました。

荒:そういう意味で言うと、私も自分がいる世界が「狭い」というのは子どもながらに思っていて。外を知りたいという気持ちはずっとありました。外を知るためには言語ができないといけないと思い「英語だけは頑張ろう」とか。今みたいにインターネットが発達して、簡単に調べたり、いろんな人とコミュニケーションをとることができなかったからこそ、外に出たいという気持ちがすごく強かった気がします。

「外貨を稼ぎたい」の言葉は、本気か、照れか。

有田:先日のD-Stadiumの「クロストーク」の中で、荒さんは「外貨を獲得する」というワードを出されました。あれはどこまで本気だったのか、仕事の話をするときのちょっとした照れみたいなものがあって大袈裟に言ったのか…まずそこを聞きたいと思っています。

荒:結構ガチですね。ひょっとすると、自分の軸かもしれないと思っていて。さっきお話ししたように、外への興味はすごく強かった。なので、ちゃんと向こうのことを知るためには言語やらなきゃって英語を始めて、意外に好きだったのと得意になったのもあって余計に海外に行きたいという気持ちが増したんですね。大学生の時には、日本を捨てて向こうに住んでも全然いいやと思ってたんですよ。私、ごはんが無くてもパンがあれば生きられるし!みたいな。だけど、ある程度長期で海外へ行くようになると…私、社会人になってから会社を休んで向こうのビジネススクールに行ったんです…そのとき「日本」への位置付け・印象が以前よりもすごい下がってると思ったんですね。大学時代に比べて、日本の製品について聞かなくなったし、日本ってやっぱりすごいよね、って言葉がなくなった。そのときに、あ、日本ちょっとやばいな、と。

有田:悔しい、みたいな気持ちがあった?

荒:そう、悔しい、って思って。なんだ、自分って意外と愛国心とか日本のアイデンティティみたいなものを持ってるんだなと。日本がこのまんま興味を持たれないような国になるのはいやだなと。日本の底上げをしたい、何ができるんだろうと考えたとき、私はもう働いていたし、ビジネスをしていたから、「日本でもこういうサービスがあるんだ」「日本発でもやっぱり技術力高いよね」って言われたい…そう考えた先の究極が「外貨を稼ぎたい」だったんですよ。

有田:そんな意思を象徴的に表現するときに「外貨」っていうワードを使うと?

荒:そうです、そうです。わかりやすいので。「外貨」って、非常に。

有田:なるほど。私の回りで「外貨を獲得する」ってワードを使ったのは荒さんが初めてかなあ。

荒:そんなに言わないですよね、「外貨」って。

有田:NTTデータでも言わない?

荒:言わないですよ。だって、私、入社したときも「海外でビジネスしたい」「海外に通じる物をつくりたい」って言い張ってたんですけど、当時は会社自体も目線はグローバルには向いていなかったので、人事のひとに「荒さん、NTTのNってニッポンですよって」言われて。3年でこの会社辞めてやろう!と思いました(笑)。

有田:でも、会社そのものもグローバルに舵を切っていくタイミングみたいなのはあった?

荒:ありました。日本の大企業みなさんに言えることかもしれませんけど、今や日本は人口が減り、かつ「みんな使っているのはAppleかGoogleでしょ?」みたいに外資系企業も当然になっている世の中で、日本のマーケットだけをターゲットにしてビジネスを考えているとシュリンクする一方なので。やっぱり海外に目を向けて拡げていかなきゃならないというのは、ここ7〜8年くらいでずいぶん変わりました。

VRと野球。そこから見えてくるもの。

有田:今のようなVRを使った事業をされていて怖くはないですか? 野球が変わりそうとか。

荒:そう言われる方もいます。私自分が色々やってて言うのも何ですけど、多分、全部置き換えられるとか、100%になることは絶対ないはずなんですよ。それこそ先日の(中学生との)議論の中でも、何人かに聞かれたんですよね。「スポーツのパフォーマンスって、データだけじゃなくて感情も大事じゃないですか」って。本当にそうだなと思います。いくらデータ上で、左のストレートに対しては打率がもう完璧だ!みたいな人がいても、たとえば、テンションが全然乗らないとか、なにか気持ちを乱すようなことがあれば、それは100%な人だってそのときうまくいかない確率はすごく上がるわけで。未来のことを考えると、データとか、AI的なもので補完できる領域は確かに増えるでしょうけど、多分100%にはならない。それを超えるものをあるのがスポーツかな、と思っています。

有田:そこが魅力?

荒:はい。それでいいかなって思っています。

有田:そういう不完全な部分があるっていうのは、仕事をしてて、事業してて、楽しい部分じゃないのかなって思うんです。すべて自分が支配、制覇できてしまうと、それはそれで面白くないだろうし。

荒:逆に言えば、ちょっと困っているところを、ちょっと助ける。それによりもっと面白くなる、もっとやりやすくなるとか、そういう可能性が広がる部分に対しては、何か技術的に出来ることがあるならやりたいし、やってて面白いですね。それがすべてというところまではビジネスとしても絶対に成立しないし、私自身も求めているものともなんかちょっと違うかなと感じます。

「野球版 Tik Tok」 がつくる「個」。

有田:今、荒さんのなかで、まだこんな先があるよねって思ってる部分とか、いやいや同じ方向なんだけどちょっと違う軸でやってみたいなと思ってるとか、そのあたりも伺えればと思います。

荒:そうですね。今のサービスはまだまだ発展途上の部分がたくさんあって。ターゲットも今までプロが中心だったものを、ようやくこの春からアマチュアに展開しています。この世界で私が目指したいのは、野球をやっている子たちが「今日はVR20分練習したんだよね」「それでちょっとインコース、タイミング合ってきたんだ」みたいな会話が「素振り100回やりました」の代わりに、当たり前になってくる世界なんです。

有田:荒さんはアンチ体育会系みたいなところがある?

荒:全然そんなことはないです。自身が体育会出身ではないのでその奥深さを理解できていないのかもしれないんですけど。(事業を)進めるにあたって制度的に無理とか、こういうのはちょっと受け付けられないみたいなことが今後たくさん出てきてくるかもしれないんですけど、現時点ではそこも含めて探るタイミングかなという感じです。

有田:野球もアマチュアになればなるほど、昔ながらの体育会系の根性と気合みたいなものが残っているようですし。プレイヤー以外の人も含めた価値転換があるのかなと思うと、ちょっとわくわくしますね。

荒:そうですね。今トレーニングっていう切り口から入っていますけど、もう少し業界っていう視点で考えると、まだ色々出来ることがあるんじゃないかと思っていて。それこそプロになるとか甲子園に出るようなチームって、中学時代から引き抜いてスカウトしていることがあるわけですけれども。それも強豪校に在籍していないと注目されないわけじゃないですか。でも、学校としては弱いけど、チームとしては9人ぎりぎりだけど、そのなかのAさんはものすごいポテンシャルを持っているかもしれないわけで。その子はダイヤの原石かもしれないのに、これまでの注目の仕方では絶対引っかからなかった。でも、ちゃんと一人一人の可視化ができると、新しいスカウトの方法があるのかもしれない。そうすればもうちょっと夢?が広がる部分もありうるのかなって思っています。この仕組みを『野球版TikTok』って呼んでるんですけど。今って、そのへんを歩いている女子高生がいきなり何百万フォロワーとかを持ち、デビューも出来ちゃうわけじゃないですか。野球の世界でもそういうのがあっていいと思っていて。「チーム」に注目があつまるのも大事だけど、「個人」に注目が集まることで、もうちょっと野球をする人の選択肢を広げるってことができれば、新しいITの活用になるのかなって思います。

有田:まさに「個」ですね。荒さんの「世界観」みたいなところを感じさせてもらいました。


最後に、全然関係ないお酒の話。

有田:お酒は呑まれるんですか。

荒:飲みますね。コロナで呑む機会が減っちゃって残念なんですけど。

有田:どんなお酒を呑むんですか。

荒:ワインと日本酒ですかね。母親の家系が新潟なんですけど、昔杜氏をやってたくらいなので、強いんですよ。お酒。

有田:そりゃ筋金入りですね。私もここ2〜3年は日本酒が8割くらい占めてるかなぁ。楽しい、日本酒、本当に楽しい。

荒:奥が深いですよね。知らないことがたくさん出てくる。

有田:わかる、わかる。で意外と、今、自由なものが生まれている気がする。香りとか、ラベルとか。なんだろうな、それこそ、地方の小さな酒蔵がデータを集めていろんなことにチャレンジして、それがモノになってファンがついて……みたいな。そういうのがいっぱい見えてきたなと思って。

荒:さっきの外貨で言うと。日本酒が海外で人気なの嬉しいです、やっぱり。あと日本のウィスキーはすごいです。日本のプロダクトが評価されてるって、ほんとに嬉しい。

田:ありがとうございます、いい締めをしていただきました。


■D-Stadium「編集の教室」に参加の中学生が書いた企業インタビュー記事は、こちらから。