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  3. マルチな人間にならなくていい。理想は、サザエさんの世界。[D-Stadium編集部・企業インタビュー:東日本電信電話株式会社]

どうしたら、自分の好きなことややりたいこと、楽しいと思う軸を大切にしながら、社会(会社の上司や、身近な関係者など)から与えられた役割を全うして生きることができるのか。そんな問いを持って、NTT東日本の新規事業である「スリープテック」事業のプロジェクトリーダーである尾形さんにお話を伺った。

東日本電信電話株式会社 新規事業プロジェクトリーダー 尾形哲平さん

もっとも重視したいのは体感。例えば「気持ちいい!」目覚め。

小さい頃の私は、寝るのが惜しくてたまらなかった。なぜずっと起きてちゃダメなのか。夜の眠りは、何のために存在してるのか、睡眠事業に取り組む尾形さんに聞いてみた

「ポケモンでいうと、HPをポケモンセンターで回復させるみたいな感じですよね。HPがないと戦えないし、体や心がもたない」

「特に、睡眠は一番最初に削るじゃないですか。ご飯食べないとかはないと思うんだけど。睡眠時間を削って働いたり、あるいは寝ようとしても寝れなかったり。『あーもう仕事残ってるけど、21時に寝よう』ができる人ってきっと多くないと思うんです。そのうち、体を壊してバタっと倒れてしまったり、心が疲れて自分自身や身近な人との関係性が悪化してしまったり。睡眠と健康に関する知識や意識を高くすることで、『次の日にやったほうが絶対いいよね』『もうちょっと睡眠とろう』とか、そういう人が増えるといいなって思って、この事業に取り組んでいます」

新・健康経営サービス「睡眠偏差値forBiz」

「最高の睡眠」の数値化・指標化と睡眠改善アドバイスを行い、企業で働く人の健康とエンゲージメントを高める睡眠事業。NTT東日本が手掛けるからには、数値化やデータ化に注力しそうだと勝手なイメージを持ったが、担当の尾形さんが最も大切にしたいのは、体感覚だという。

「可視化はあくまで参考であって、『すごくグッスリ眠れた』とか、『今日はスパッと起きれたな』とか、そういう体感を大事にしたいって思っています。今後は、睡眠といろいろな領域の掛け合わせ(たとえば、睡眠×香りや、睡眠×サウナなど)をしながら、「最高の睡眠」のたくさんの形を探していきたいと思っています」

営業も旅も、同じといえば同じ。 

2012年、NTT東日本にシステムエンジニア職で新卒入社した尾形さん。最初に配属されたのは提案サイドのエンジニア職で、以降、彼が一貫して担ってきたミッションは「新規開拓」と「仲間探し」だ。屈託のない笑顔で話す尾形さんからは、親しみやすさと裏表のなさが感じられる。

「旅が好きな理由と一緒なんですけど、新しい人と出会うことがほんとに好きだし、新規開拓の仕事は、初めてのところに飛び込んで地域の人とお話しさせてもらうことで、それは楽しみのひとつでもあります」

私も学生時代に、東南アジアを中心に10カ国以上を巡ったぐらいに旅好きではあるが、「飛び込み営業」の中に「旅」と共通した面白さを見出すのはむずかしい。どんなことでも見方を転換して、そこにワクワクポイントを見出すことができるのは、尾形さんの強みの一つだろう。

周りの人が『尾形は、こういうキャラなんだな』って見ていてくれて、今がある。最初の配属先だった山形支店で、新入社員を長年見てきてる先輩方が、『尾形はこういうやつだ(尾形だから仕方ない)』『お前はこれが好きなんだろう』と言ってくれて。マネージャーからは、人事異動の際『この仕事はお前には向いてないのでは』とか向いてなさそうな職場を断ってもらえたり」

自分一人で自分のことを知るのはむずかしい。自分のことを見てくれる人がいて、少しずつ自分のことがわかってくる。大企業だからこその環境だったのだろうか。

当時のSEの同期たちとの飲み会

「平均3年ごとくらいに部署異動するんですけど、サービスを拡張させる話とか、新しいビジネスを考えるとか、何かを一から作るとか、そういう仕事をしていることが多いですね。途中からほんと、そういうレールに乗ったのかなと思う。『新しいことをやる』キャラに認定されたなと。自分としても好きなことだから、それはもう最高に嬉しい認定ですね

キャラ認定が嬉しい、という尾形さんの言葉に戸惑いを覚えた。「キャラ」という言葉は、私にとってはどちらかというとネガティブなものだ。仕事柄、普段中学生と関わることが多いのだが、彼らが「キャラ立て」に苦しんでいる姿をよく目にする。「私は人前で発言するキャラじゃないから」とか「僕はいじられキャラだから」など。自分を取り巻く関係性の中で、あるいは、自分自身によって作りあげられた「キャラ」という檻。「キャラ」に縛られて動けなくなる。私にも身に覚えがある、不自由なイメージだ。

一緒に働く人を友達や仲間のように思う。仕事というより、一緒に遊んでるような感じ。

「やっぱり、ちょっと独自路線に行きたい時もあります。それが自分のワクワクだし、自分はこっちに行きたいという気持ちがある時、いかに周りに理解してもらえるかがポイントになる。周りが「いいよ」って言ってくれるのは、結局それまでやってきたことの結果じゃないですか。当たり前ですけど、結果を出しに行くっていうのは、大事だと思います。何も成果がなくて独自路線だけやりたいって主張しても、多分周りから「いいよ」とは言ってもらえない。だから新しい部署に行ったら、まずはそこでの役割をしっかり担って、誰よりも成果を出そうっていうのはすごく意識しています。0から1でも10から100でも何でもいいから、何かしらの成果を出しにいく」

具体的に尾形さんは、当時メインのミッションとして与えられていた既存顧客のリレーション形成に取り組みつつ、並行して、新規顧客開拓にも励んだ。

「片っ端からホームページを検索してメールを投げ込むとかアポイントとって会いに行くとか。ただそれだけなんだけど、なぜかみんな積極的ではないんですよね」

それはなぜか。ある人は、その業務に面白さや意味を見いだせてないのかもしれないし、ある人は、目の前の業務でいっぱいいっぱいなのかもしれない。私もそちら側だと思う。

「新しく出会う人と話すとき、お互いにどれだけオープンマインドでいられるかを大事にしています。作られている状態とか、ほんと嫌じゃないですか。立場や肩書きよりも、その人がどう生きてきたかを聞くのが好きなんです。深く聞いていくと、基本みんな面白い。どんな人にもそれぞれの人生があるんだから、そりゃ当然ですよね」

尾形さんは、柔軟に視点を変えながら、与えられた役割に楽しみを見つけることができる人なのだろう「人は、基本的にみんなおもしろい」という人間観を持っている尾形さん。現在取り組んでいる睡眠事業の共創パートナーを探す上でも、そのスタンスは変わらない。

「最近はあんまりできないですけど、節目節目で飲み会に行ったり、ビジネスで付き合っている人であろうと雑談を多くしたり、そういう余白の時間にめっちゃ掘ります。そうしていくと、その人に対する愛着が生まれて、こういう人なんだなあ、自分も頑張ろうって思える。一緒に働く人を友達や仲間のように思うと仕事も楽しいし、ただ請け負っているだけじゃなくて常にフラットな感じです。業務上、お金はいただいてたりするんですけど、その中でも人同士の関係はずっとある。まあ友達と一緒に遊んでるような感じとも言えるかな」

カツオはカツオで、中島くんは中島くん。

「子どもがいるので、毎週テレビで『サザエさん』を見ているんですけど、めっちゃいいなってと思うんです。みんなそれぞれのキャラが立ってて」

尾形さんのいう「サザエさん」の世界、「キャラが立っている」とはどういうものなのだろうか。

「僕も、最初は何もわからない状態からスタートしています。いろんな仕事をやるなかで、自分で体感しながら、周りの人に教えてもらいながら、好きや苦手がだんだんと明確になって、キャラが立ってきた。つまりは、マルチな人間にならなくてもいいんです」

自分の好きなことややりたいこと、楽しいと思うことを、何気ない雑談の中で話せるといいですよね。それで、そんな自分の軸に伴う行動がとれるといい」

尾形さんの言う「キャラが立っている」とは、その人の好きや苦手が周知されているということ。つまり、「嬉しいキャラ認定」とは、素のままの自分を相手が理解してくれていることが嬉しいのだ。軸があっても、伝えられずに我慢したり、軸とは反対の行動をとったりしていると、自分と役割の間でしばしば摩擦が起こる。自分の軸を自覚して、それに沿った行動をしていると、自分の心が満たされるだけでなく、周囲からも「あなたはそういうことを大事にしたいんだね」と認知してもらいやすくなる

雑談の中で友好関係を築くことで、互いの「素のまま」を出しやすくなることを、尾形さんはきっと、自身の体感から学んでいるのだろう。

サザエさんの世界でいうと、カツオはカツオで、中島くんは中島くん。花沢さんは花沢さんだし、かおりちゃんはかおりちゃんでいい。それが尾形さんの言う、「サザエさん」の世界なのではないか。

キャラなんか立てなくていい。率直であること。自分は自分、あなたはあなた、でいれる。そんな環境だと、働きやすい。まずは、すきま時間で、隣の人と雑談をはじめるところから。

中学生の取材を受け

中学生も社会人も一緒かもしれない。

中学時代に戻って、友達と話をしていたような、なんかそんな感覚でした。真剣に悩みましたし、真剣に回答しましたよ。どういうふうに聞いてくれたのか、彼らの文章を読むのが楽しみです。


■D-Stadium「編集の教室」に参加の中学生が書いた企業インタビュー記事は、こちらから。