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“自分にいいレッテルを貼る通過点”だった。− 編集の教室レポート静岡版

静岡スペシャルでも編集の教室がスタートしています。全国版とはまた違って、Zoom越しにいるみんなが全員同じ天気のなか過ごしているのもなんだか特別に感じ、面白いです。

さて、一つ目の課題は、“自己紹介”の原稿作成でした。

自己紹介。大人になってからの方が、あれこれ考えて話すようになりました。自分の一面を取り出して相手に見せるのが自己紹介なのかも、という当たり前といえば当たり前のことに気づいてから、なんとなく緊張するのです。

これを書いている私は、小さい頃、無難な自己紹介しかしませんでした。というより、それ以外の選択肢を無自覚に持っていなかった気がします。たとえば初めての親戚に会ったとき、名前と学年くらいしか言わなかった気がするし、学校ではどんなことをしているの?と聞いてもらったら「生徒会にいます」と言って、好きなことは?と聞かれれば「勉強です」と答えていました。そうしたら大体、すごい、頑張り屋さんだね、と言ってもらえるので、これでいい印象を持ってもらえたな。よかった。と満足していたのです。
でも正直、その頃私は、聴いている音楽はヴィジュアル系のロックだったし、ライブハウスに行くのが勉強より何より楽しかったし、難しい漢字はほとんどライトノベルから覚えていたし、本当に全く大人に言ったことはなかったけれどまだ目新しかったインターネットでHTMLタグをいじって簡易HPを作るのが好きでした。だけど、「これがこんな私です」と、口に出してみることはなかった。こういう話をすると家族にすらなんとも言えない反応をさせてしまっていたから、隠していたのかな(なんともいえない反応をしつつ、ライブハウスについて来てくれたお母さん、ありがとうございます、無茶させました)。

何が言いたいかというと、私にとっての自己紹介は、“自分にいいレッテルを貼る通過点”でした。決して“自分という人間を語って、相手とちょっぴり近づくこと”ではなかった。でもきっと、どうせ自己紹介をするなら後者を目的とした方が心地いい世界に一歩近づける。そう感じ始めたのは大人になってからで、今でも、自分のことを話すときはまだ慣れなくてどきどきします。決して、苦しいどきどきばかりではありません。

たくさん自分のことを書いてしまいました。
『D-stadium静岡スペシャル・編集の教室』最初の課題は、冒頭に書いた通り“自己紹介”の文章を書くこと。そしてこの教室には4つのルールがあります。そのうち半分を紹介すると、「大人にほめられることを考えない」「感じること、考えていることを正直に書く(楽しい、好き嫌い、不思議、気持ち悪い、など)」。参加してくれているメンバーはこれらのルールをときにむずかしい顔で反芻しながら、筆を進めました。

そうして出来上がった文章が、順次当サイトへ掲載されています。

自分の好きなことについてのびのびと書いた記事もあれば、
取り戻したい、自由な時間(金田 季紗)

自分の感じる違和感について書いた記事もあります。
沈没船のジョーク(井上 月)

メンバーみんなはどんな気持ちで自分のことを考えているのでしょう。成績がつくわけでもないこの教室の文章を書くとき、どんな気分で筆をとっているのでしょう。教室のルールや、講師の謎かけのような言葉を、どう感じ取っているのでしょう。私がもし同じような歳の頃に自己紹介について書いたなら、どんなことを書いたかな。悩んだかな。

この自己紹介原稿を書くスタートから、静岡スペシャル版全8回の終わりに向けて、現在も教室は進んでいます。なんだか回を追うごとに、みんなが言葉を発するまでに考える時間が、より増えた気がします。それがどういうことなのか、ひょっとすると、二つ目かつ最後の課題で窺えるかもしれません。全国や世界で活躍する『面白人』へのインタビュー記事。8週間、書いたり考えたりを繰り返したメンバーのつくる集大成の原稿が、心から楽しみです。






【編集の教室】
自分を表現する文章を書いてみることからスタートし、全国の面白人にインタビューして記事を書くことに挑戦します。キーワードは「自分の思いを、自分の言葉で、誰かに伝える」。

【講師】
湯川カナ:一般社団法人リベルタ学舎代表・なりわいカンパニー株式会社代表・兵庫県広報官
有田佳浩:コペルニクスデザイン代表・兵庫県編集デザインディレクター

【D-stadium通常版・編集の教室レビュー】第1回



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